親友との心の絆、失われた人の喪失感を互いに共有し合い、癒やし癒される人間同士の縁を丁寧に描いた人間ドラマ。
この映画では人と人とのミラクルのような縁が次々と現れてくる。現実の世界ではこんな奇跡は稀有。だからこそ映画の中の登場人物たちに思わず「しっかり…」と声をかけずにはいられない。特に梓(黒木華)と澄人(中村蒼)との縁は終盤に向かうにつれて、もう赤い糸で繋がった運命のようにさえ思われ、梓にはどうかこの縁を手放さないでと祈るような気持ちになった。
どの俳優もしっとりとした熟れた演技。交際相手に対する黒木華のちょっと微妙な感情を表出した表情演技が素晴らしい。先日見た「チャチャ」で一気に自分の中での注目度の上がった、親友・叶海役の藤間爽子…眼、目元が魅力だなと思った。叶海の中学生時代を溌剌と演じた白鳥玉季にも目が行った。いつも脇役ながらその役柄に幅があって好きな安藤玉恵も感じのよい人物を演じていて惹きつけてくれた。
特に泣かせる映画が好きなわけではないし、正直にいえば人と人との縁がこれほど巧みに組み上げられていると作りもの感で訝りたくもなる(田口トモロヲが台詞で代弁していたことにも通じる)。でもそんな頭の中での思考を遥かに超え凌ぐ感情の揺さぶりがこの映画にはあった。鑑賞中あまりに涙して久しぶりに頭の芯が痛くなった。