ほーく

エリン・ブロコビッチのほーくのレビュー・感想・評価

エリン・ブロコビッチ(2000年製作の映画)
4.3
今日も熟成ブログ18年ものを

「インサイダー」と同時期にぶつけてきた大企業相手の訴訟もの。実際の事件を題材にしているだけに、荒唐無稽なところはなく、脚本もしっかりしている。なんといっても評価すべきは、ジュリア・ロバーツの立ち振る舞いであろう。常々、彼女が演じる薄幸の美女には感情移入しづらく、その原因は彼女の顔立ちにあるのではないかと思っていたのだが、この作品での彼女の生き生きとした演技を見て愁眉をひらいたのである。つまり、彼女の大きな口、太い眉、大きな目、くっきりした鼻筋は、すべて派手派手しい、言葉は悪いが下品な化粧と衣裳が似合うのである。間違っても、病弱であったり、貴婦人であったり、男の一歩後を歩いたりしてはいけないのである。ブランドスーツ(原色)を身にまとい、赤のルージュをくっきりと引き、もちろんピンヒールで肩で風を切って男どもを押しのけて闊歩するのが似合うのである。これが地ではないだろうかと思わんばかりだ。
 モデルとなった人物自体が型破りであったのだが、それはジュリア・ロバーツが演じたことによってより我々の鼻先をかすめ、その彼女が健康を害する汚染物質を不法投棄していた大企業をぎゃふんと言わせることによって、観客たちはやんややんやの大喝采なのである。そのため、法廷劇パートはさほどボリュームはなく、原告集めパートでひとりひとりに向かい合う姿を丹念に描く。その足で稼ぐスタイルがまた好感を生むことになるのである。法廷劇の多くは、整合性や論理性がその作品の出来を左右するのであるが、それ以外の部分でぼぼ勝利を収めたこの作品は、ひとりの女性の半生を描く伝記でもあり、英雄伝でもあるのだ。
 余談ながら、スティーブン・ソダーバーグ監督は、この年「トラフィック」という麻薬戦争ものでもアカデミー作品賞にノミネートされており、そのセンスとバイタリティには今後も期待できるのではないだろうか。
※ 2002年には、「オーシャンズ11」と、まだまだ快進撃は続く。
ほーく

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