滝和也

エリン・ブロコビッチの滝和也のレビュー・感想・評価

エリン・ブロコビッチ(2000年製作の映画)
3.8
寄り添う事の強さ
人の心に寄り添う
事ができる者は
強さを持っている

その強さが生み出した
結果は如何に痛快
であることか…

「エリン・ブロコビッチ」

ジュリア・ロバーツの代表作にしてアカデミー女優賞に輝く驚愕の実話を映画化した作品。法廷モノの1つではあるものの…破天荒にして人間味溢れる女性のヒーロー映画でした(^^) (敢えてヒーローですね。ヒロインではわかりにくい)

3児の母にして離婚歴2回。嘗てはウィチタのミスコン女王だが現在無職のエリン。面接帰りに車をぶつけられ大怪我…訴訟を起こすが、法廷での暴言で敗訴。勝てると言った弁護士の事務所に押しかけ、無理やり雇ってもらう…。書類整理の中で大手企業の工場が周辺の住民の不動産を買い上げており、何故か住民の健康状態を示す書類が不動産書類に付いていることに気づく。それはアメリカ最大の賠償額に繋がる水質汚染による健康被害訴訟の始まりだった…。

驚愕の訴訟の裏側に驚愕の人物が…と言うストーリーです。正直、最初の30分位は我慢してました…。余りにも酷い主人公とその不運ぶりに…。まぁ自己責任の部分もありますからね…。ただ…この法律もマナーも(笑)何も知らないエリンの人間性が見えてくる中盤あたりから映画として面白くなってきました。

監督のこの人物エリンを正直に伝えようとしているのが分かります。エリン自体は完璧な人間ではなく、学もなく、マナーも知らないですが、それ以外の人間力がある。一度決めたら曲げない貫徹力、粘り強さ。正しいことを正しいと言える正直さ。そして他者に対して共感し寄り添う能力。それが被害に会った人々に出会い、マスリー弁護士と憎まれ口を叩きながらも助け合い、原告団をまとめていく姿から感じられ、胸のすくような展開に続いて行きます。実話だけに派手な演出はありませんが胸に染み渡るラストまで引っ張られて行きますね。

ミニスカに胸のはだけたファッションにピンヒール。凄まじい…アバずれ風の姿のお母ちゃん(笑)エリンにジュリア・ロバーツ。この時期この役は正にピッタリ。プリティ・ウーマンで見せた美貌と破天荒な部分。そして人間味溢れる表情の作り方。彼女の良い部分、魅力が全て詰め込まれた当り役でした。

彼女を支えるキャラも良い方ばかりなのですが、弁護士マスリー役のアルバート・フィニーがまず良かった。普通の弁護士が彼女に振り回されながら、有能さを見せていきます。また二人の会話のやり取りが中々楽しい。罵り合いながら、互いを必要とするパートナー。その中に人間味があり、お茶目なキャラも出てくる巧みな演技でした。また法曹界の実情も垣間見え、なるほどなぁと感心しきりでした。

陰ながら彼女を支えるお隣さんから恋人に昇格するバイカー、ジョージにアーロン・エッカート。優しさが出ててこちらも○。この後もうまく行ってるといいなぁ…と思わせてくれます。

派手な演出はないのですが、エリンの努力、そしてスラングがエリートや大手企業の鼻を明かす痛快な脚本、当り役を得たジュリア・ロバーツの名演に支えられた良作ですね。人の思いの強さが見せるアメリカンドリーム、そしてアメリカ社会の正義を歌う、らしさあふれる作品でもありました(^^)
滝和也

滝和也