[アイスランド、ディディが居なくなった日] 50点
ルーナ・ルーナソン長編四作目。アイスランドの長い夏の日の夜明け。若い美術学校性ウナは先輩のディディと付き合っていたが、彼には遠距離恋愛中の恋人クララがいた。しかし既に、彼の中に彼女への恋愛感情はもうない。クララに別れを告げに行ってくるわ、と言い残して故郷へと戻ったディディは、トンネルの崩落事故によって、あっけなく帰らぬ人となった。二人が付き合っていたこと、ディディがもうクララに興味がないことを知っていたのはウナとディディの親友であるグンニだけ。他の人から見ればバンドメンバーの一人でしかない。そして、レイキャヴィクにクララがやって来てしまい、ウナは感情を表に出すことが余計に出来なくなってしまう云々。居心地が悪くなり続ける窒息しそうな空間を静かに観察してくわけだが、どこかクララ自身も(ウナから見れば)悲劇のヒロイン的な振る舞いをしながら、ウナの押し殺した表情を見て、ディディの心変わりに気付いたのだろう。終盤に掛けてディディ不在のなかで彼と過ごした時間が圧縮され、それによって二人が向かい合うような形となっていくのが興味深い。最も象徴的なシーンでヨハン・ヨハンソン"Odi et Amo"が流れる。これはラテン語で"私は貴方を憎み、貴方を愛する"という意味らしい。まさにウナとクララの関係性だ。ただ、あまりにも繊細すぎて感度が馬鹿な私は上手く馴染めなかった。北欧の映画は『ヒューマン・ポジション』『アンデッド 愛しき者の不在』等々、静かに感情の変化を捉える作品が多くあるが、どの作品も静かすぎて何も伝わってこない気がしている。