Aki

千年の祈りのAkiのレビュー・感想・評価

千年の祈り(2007年製作の映画)
4.3
イーユン・リーの原作は未読。前半はほとんどがフィックスで撮られているのだけど、ちょくちょく入る長回しには、候孝賢を思い浮かべてしまう。ただし、光の扱いに関しては候孝賢の方が格上(例えば『珈琲時光』の古書店)。とは言え音響設計は負けておらず、父娘が部屋で夕飯を食べている最中しばしば、かなりの小音量で隣家からのピアノの音が聞こえたりと、繊細で気合が入っている。
中盤以降になってカメラが動き出すのだけど、そんなことよりも、特筆すべきは父親がバスに乗った際の2カットを繋ぐディゾルブがちょっと珍しいくらいに流麗なこと。余りに自然で鮮やかで思わず「えっ凄い!」と声が出てしまった。
あと時々挿入される静謐なピアノの劇伴が美しい。他に言及すべきはカーテンや壁、逸らされる娘の視線といった、父と娘の間にある溝か。だからこそ、ベンチでの和解の視線の交錯が僅かながらでも感動的。名品。
Aki

Aki