なべ

チャンスのなべのレビュー・感想・評価

チャンス(1979年製作の映画)
3.2
2本立てのじゃない方で鑑賞。何十年ぶりに観たけど公開当時の印象と変わらなかった。悪くはないが凡庸。もっとおもしろくできたのに、わざとそうしなかった風合いの作品。
庭師チャンスの発言はどうとでも受け止められるふわっとしたもの。なので、相対している人の気持ちがそこに投影される。坊主のわかったようなわからないような法話に似てる。自分が無意識下で思っていることが、投影される鏡みたいなもんだね。自分の欲しい答えが見出せるもんだから、みんなチャンスを特別視しちゃう。
今なら大統領に祭り上げられたあと、一気にハシゴを外されるところまで描くだろうが、そんな描写はない。きっとラストのプランはいろいろあったのだろうが、最後は神のような存在になってしまった。超人かな。
結局なんの話だったの?と狐につままれたような気分になる。
ドクター・ロバートは真実に至るものの、だんまりを決め込むし、メイドのルイーズは「あいつは頭が空っぽなんだよ!」と憤るが、人種の問題と結論づける。真実はさほど重要ではないのだ。
公開当時、ぼくはてっきりチャンスはあのまま湖で溺れ死ぬのだと思ってた。ベンの死を誰より悼んで、後を追った懐刀としてメディア等で取り上げられ、今ではチャンスの日として国民の祝日になっている…みたいなラストだと思い込んでたw
前半はおもしろいのに、話が進むにつれ着地点を見失い、どんどん輪郭が曖昧になってしまった。名作になり損ねた映画の佇まいがやけに寂しい。
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