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嘆きの通りのRinのレビュー・感想・評価

嘆きの通り(2015年製作の映画)
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サスペンスフルなドラマの中で人間の顔を獲得する“嘆き”──ルチャリブレ(メキシカンスタイルのプロレス)の覆面を被った小人症の男ふたりが、母親から何やら支払いの催促を食らったあとに家を出て狭い通りを歩いて行く。カメラはふたりの追跡をやめ、やおら右に方向を変えて行き止まりの路地にゆっくりと入っていくと、そこには人相の悪い男ともう若くはない娼婦がたむろしており、娼婦のひとりが春を売りに行くためにこちらに向かって歩いてくる。なるほど、“嘆きの通り”とはメキシコのとある町の貧しい界隈にあるこの狭い通りのことであり、打ち捨てられた社会の片隅への“嘆き”が徐々に立ち現れてくるような作品なのだろうと、そんな風に早合点しながら、同時にこの調子で貧民窟の漠としたイメージが形成されるだけなら相当退屈かもしれないと警戒もしたのだけれど、展開が進むにつれて“嘆き”はしっかりと人間の顔を獲得し、意外にもサスペンスフルなドラマを伴った立体的な作劇を引き連れて迫ってきたので、序盤の先入観とは裏腹にかなり物語に引き込まれるタイプの映画だった。

だけど、私この監督のモノクロ映像苦手だ。たぶんライティングがダメなんだと思う。あと、カメラワークは面白いんだけど、時折ショットへの無頓着さを感じるのは私だけなんだろうか。
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