♪ 色を無くした音もない世界
愛の歌 震える声であの子は歌う
世の中には二種類の作品があります。
それは“分からない”のが許せる作品と、赦せない作品。意味不明な物語でも、登場人物に共感が出来なくても。何故か許せる作品があるんですよ。
僕にとって本作がそれでした。
解答(エンディング)に至るまでの思考の軌跡が面白いし、想像力を託せる余地はあるし、何よりも監督さんの“覚悟”を感じましたからね。それで十分なんです。
開き直っている、とも言えますけどね。
そもそも前作を鑑賞しないと世界観もルールも分からないのは「オレに付いてこれる奴だけ付いてこい」くらいの強引さがなければ成立しません。
また、細かい整合性なんて気にしたら負けです。
考えれば考えるほど、抜け道や裏技、その他色々と不都合なことがあると思うんですが…それすらもねじ伏せる本作の“秘密”。そう、本作では世界観の一端が明らかになるんです。
これにはね。
本当に“開き直り”を感じましたよ。
確かに現実的に考えたら成立しませんから、その“選択”はアリなんですが、それでも視界の外から殴られたような気持ちになりました。
やっぱり、思考を制限したらダメなんでしょう。
ありとあらゆる角度から検証することが大切だし、可能性を否定したらダメなんです。「想定外」と口にした時点で想像力が貧困だったという言い訳にしかなりません。
また、本作が面白いのは価値観を刺激する部分。
共産主義と自由主義やら、富裕と貧困やら、科学と宗教やら、対立した概念で糸を張り巡らし、それをガスバーナーで炙っちゃう感じなんです。ある意味で日本人向けの作品と言えるかも。
勿論、かなり人を選びますからね。
選ばれなかったら最後の最後で口を開けて終わっちゃうのは必至です。
まあ、そんなわけで。
映画に説明なんて要らんのです、偉い人はそこが分かっていないんです、と言える人に向けた作品。直接的には繋がりませんが、前作を観ておいた方が良いですし、前作が好きな人だけを対象にしているので注意してください。