デニロ

CURE キュアのデニロのネタバレレビュー・内容・結末

CURE キュア(1997年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1997年製作公開。脚本監督黒沢清。

公開当時。ラストのファミレスでの得体の知れぬ静かなざわめきが不気味で、今の今までずーっと残っていた。

今回改めて観て、かなり説明されているのだなと感じ取りました。

役所広司の根底にあるのは妻中川安奈のこころの病。やはり普通には暮らせないのだ。いつか約束した沖縄旅行。中川安奈はそのつもりで支度をしバスに乗り込む。が、疲れ果てた役所広司は病院に一時避難させる算段なのだ。この道行きも異界へと向かっているようで不気味なのだが、このシーンが後々に効いてくる。

萩原聖人が異常なのか、と思わせつつ、戸田昌宏、でんでん、洞口依子を介して観ているわたしのこころの襞を摩ってくるかのようだ。意識は氷山の一角とはよく言うのですが。彼らの有様を見て徐々に役所広司は蝕まれていくが、その過程はわたしのこころ根に通底する。

変わりゆく役所広司を心配する精神科医うじきつよし。が、彼もわたしと軌を同じくしていた。潜在意識が蠢いているのだろうか。役所広司に見抜かれる。お前、萩原聖人に会ったな。彼の部屋にそのマークが印されている。

役所広司のメタモルフォーゼの瞬間も説明されていた。

中川安奈を移送する病院の看護師の表情。その後、宿痾から解放されてかのようにすっきりした表情でファミレスに座る役所広司のラストシーン。そこにあのウェイトレスの仕種が被さっていくのです。

国立映画アーカイブ1990年代日本映画――躍動する個の時代にて 
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