アタフ

CURE キュアのアタフのレビュー・感想・評価

CURE キュア(1997年製作の映画)
5.0
もし「今まで見た映画のなかで一番怖いの映画は?」と聞かれたならばこの『CURE』を挙げる、それぐらい衝撃的な怖さだった。混沌とした人の心の奥底を彷徨い歩いているような感覚。陰鬱な雰囲気がとにかく怖い!!

この映画で描かれるのは人の心。役所広司が演じる刑事の高部は連続殺人事件と精神を病んだ妻に頭を悩ませ、次第に追い詰められてゆく。催眠術、鬱病、妄想…精神がおかしくなりそうなワードの数々、終盤からは現実かどうかもわからないシーンが入り乱れ、さらにはサブリミナル的に映像が挟み込まれるカオス状態に。

個人的にこのような現実と妄想や夢が入り乱れる展開って大好きなんですよね、『アイズ・ワイド・シャット』とかデヴィッド・リンチの映画とか、現実があやふやになってゆく感じが何故か心地よい。今作もとてつもなく怖いんだけど謎の心地よさもあるんですよね。なんなんだろうかこの感覚は…?

黒沢清映画ではワンカットで撮られているシーンが多いと思うのですが、この作品ではそれが特に強烈。日常の風景を映していると思いきや、そこで唐突に殺人が起こる。これをワンカットで撮っているものですがら事が起こった時のインパクトが絶大。猟奇的な殺人シーンでも音楽や演出で盛り上げず、ただ淡々と描き続ける、それが本当に怖いんです。

もう一つ黒沢映画の特徴として、スクリーンプロセスを使った車のシーンがあります。今作でも役所と妻がバスに乗っているシーンがあるのですが、これがまた異世界を旅してるような感覚がしてゾクゾクする。このなんとも言えぬ幻想的なシーンは全映画の中でも屈指の好きなシーンです。バックで流れる『ジプシーの踊り』も不気味でたまらない。

そんなわけで、個人的にこの映画は私のオールタイムベストに入るほど好きな作品であり、ストレスがたまったときに見ると何故か癒される2大映画でもあります。(もう一つは『イレイザー・ヘッド』)どちらも怖いけれど癒される、謎の効果があるような気がする。私もこの映画に癒されたのでしょうか?ラストの高部のように。
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