予想外に面白くて驚いた。会話場面のカット尻に電車を通過させたり、Uターンする車に合わせて電灯を付けたり(多少これ見よがしだが)、主人公視点でのサイドミラーにフレームインするパトカーを見せて、位置関係を示すと同時に視点も共有させて緊張感を醸出する(この後の主人公の顔が映ったサイドミラーとその奥の道路を同時に映した際の、パトカーのぬっと出てくる加減も良い)など、演出手腕が「ブルー・リベンジ」「グリーン・ルーム」と段違いに上達している。ジェレミー・ソルニエは一体どうしたのか。ドン・ジョンソン繋がりでザラーから薫陶でも受けたのか?
それは冗談として、今回、監督自身が初めて編集も兼任したことが、作品のカット繋ぎに影響を与えていることは間違いないだろう。
例えば、判事の手首のショットから野外でしゃがんでいるアナソフィア・ロブとその奥で瞬く警告灯へと繋がれる、その編集の切れ味は過去作には無かったものだ。
或いは、橋を通過する車からカメラが橋脚の下に移動すると、奥から主人公の車が川に入ってきて橋の下で止まる。そこから橋の上に主人公が登るまでを1カットでやること。1カット内で2つ以上のアクションをさせることが躍動感を生んでいる。それはラストカットも同じで、乗ってきた車のパンクしたタイヤが燃えているなど、細部が充実しているのも大変良い。
この映画は主人公が後ろからパトカーに引っかけられて始まるわけだが、ドン・ジョンソンの乗った車が最終的に後ろからぶつけられ道路から逸脱して停められる。こうした収まりの良さもよく練られている。