ヘイトと報復の連鎖に飲み込まれず、ここまで闘える人がいるのだと突きつけられる。
ご本人来日中だそう。トークイベントのチケットは取れず一般上映に。満席だった。
アブエラーシュ医師はガザの難民キャンプ出身で産婦人科医となり、イスラエルの病院で働きながら、パレスチナ、イスラエルの子供を取り上げた。「医療で分断を超える」信念の元で活動してきたが、2009年、自宅がイスラエル軍の砲撃に遭い、3人の娘と姪を失う。それでも彼は「憎まない」と言う。
・苦境から抜け出す唯一の手段は教育だという。悲しみをエネルギーに変え、あくまで理性で立ち向かう。砲撃の違法性を国家賠償訴訟で問う、行動の一貫性。負傷した娘が移住先のカナダの大学で、勉強に打ち込む事で苦しさから逃れようとした、というエピソードに、親父の魂が継承されている…と思った。
・一番強烈なのが砲撃に遭った直後、イスラエルのニュース番組に出演中のジャーナリストに電話し、その慟哭が中継された際の映像。何が起きているのかもわからないまま、電話を受けるジャーナリストが次第に事態を把握し、絶句、としか言えない表情を浮かべる(ドキュメンタリーとしても、記者目線が入る事でナラティブが多角的になってるのが良い)。アブエラーシュ医師の絶叫、イスラエル側のスタジオの鎮痛な空気。生々し過ぎて直視し難い場面だった。