ねまる

ファーゴのねまるのレビュー・感想・評価

ファーゴ(1996年製作の映画)
3.9
映画業界の話も面白かったのだけど、
私が観たかったのは、変な人と変な人の組み合わせでどんどん変な方に話が転がって、突然ぶつんと切れたように終わる話。

ドラマ版のファーゴを観た時は、
そんな話があまりに恐ろしく感じられたものだけど、人生なんてむしろひたすら悪い方に転がらないようにジタバタしているようなもので、いつ死ぬかも分からない不条理な世界。
そういう意味では私たちもこの世界の主人公と同じだ。
なんとかなんとかその場凌ぎで、今を乗り越えようと足掻いている。
人間って愛おしいよな。

スティーブ・ブシェミの役柄、表情が面白い。
ブシェミの上手い話に乗っかって取り返しがならなくなるタイプの小悪党も良い。
ドラマ版のビリー・ボブ・ソーントンといい主人公を破滅に導く悪魔の役は、みなさんお芝居が素晴らしいんだよな。
大男と小男、寡黙とお喋り。
予想もできないコンビ。

フランシス・マクドーマンドが妊婦の保安官。アメリカ人からすると、田舎っぽい訛りが面白いのだそうだけど、訛りまでは分からないや。話だけでは悲劇でも、あくまでコメディなんだよね。
そんな保安官の食事シーンが印象的。
お腹の中に命を抱え、ひたすら生へと向かう保安官からすれば、
彼らが死へと向かい続ける光景が信じられないだろう。

人々は側から見るほど幸せじゃない。
知っている人々のコミュニティの中で、みんなある程度で幸せに見えるが、
どこかで不安や歪みを抱えている。
今ここに生きているということ、大切な人がいるということ、それってかなり幸せだ。
ねまる

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