アメリカでホラ話の象徴とされている不気味なポール・バニヤンの像がこの作品の全てを物語っている。冒頭の嘘テロップ、タイトルの「ファーゴ」(作中の舞台とは殆ど関係ない)、狂言誘拐その他諸々。登場人物もとにかく嘘つきだらけでみなどこか間抜けである。
映像面に関してはパッケージが象徴するように雪景色とそこに染まる赤色の血が印象的。だが内容のせいか悲惨な光景には感じない。全く息の合ってない誘拐犯二人がどんどん空回りしていき、むしろ殺害シーンがどれも滑稽に思える(特にラストの殺害シーンはエスカレートし過ぎ)。
ただ唯一、どこかマイペースなのに抜群の推理力であっという間に事件を解決してしまうフランシス・マクドーマンド演じる女性署長マージだけが頼もしすぎた。犯人逮捕後の語りも作品に良い余韻を残させている。最近「スリービルボード」を観た影響のせいか今一番好きな女優になってしまった。
人によってはどこかヘンテコで掴み所のない作品に感じるかもしれないがまさにその通り。本作はコーエン兄弟オリジナルの笑えるサスペンス映画という奇妙なジャンルを確立させた大傑作。