ノリオ

誰も守ってくれないのノリオのレビュー・感想・評価

誰も守ってくれない(2008年製作の映画)
1.5
一見、社会派な映画なような気がするが、決しそうではない。
社会派のふりをした映画、それが『誰も守ってくれない』だ。

脚本家、君塚良一の特徴は題材に対する徹底したリサーチと、そのアレンジ力にある。

冒頭、容疑者の家に警察が事情聴取に来るシーンがある。そこで刑事たちは事務的に彼らに離婚を進める。役所仕事のように離婚の手続きをその場で行う光景は、おそらく実際に取材で得たのだと思う。

確かに納得させられるリアリティがそこにはある。この時点でその表現方法は別として、リアリティを追求し硬質な社会派ドラマを期待させる。
けれど、物語が進むにつれ徐々にアレンジの虫が騒ぐのだろう。無意味なディフォルメ、ネット社会に対するありきたりな警鐘、君塚節は炸裂していくのである。


この映画で最も重要なのは、少女が兄の犯行について黙秘しているということである。
彼女は本当に真実を知らないのか、それとも知っているのか。

容疑者の家族は糾弾される対象になるのか? それとも勝浦が言うように容疑者の家族も“被害者”なのか?


テーマは重たいが、やっていることは『踊る大捜査線』とほとんど変わらない。
ドキュメンタリータッチのカメラワークを狙ったということらしいが、誰がどう見ても『24』の二番煎じでそうでなければならなかった理由というものは存在しない。そのカメラワーク自体も後半にかけてブレまくってくる。


「これを見たら社会派ですよ」
そんな風に訴えかけてくるエセ社会派ムービー。


ほんの少し視点をずらせば傑作になれるだけの要素があっただけに非常に残念だ。
ノリオ

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