『アイヌプリ』 東京国際映画祭Nippon Cinema Now 部門での上映。
素晴らしいドキュメンタリーだった。引き込まれた。
私がアイヌを初めて意識したのは子供の頃マンガ「カムイ伝」を読んだ時だったかな。かつては土人扱いだったが、2019年には「アイヌ民族支援法」が制定されちゃんと「先住民族」と認められた。
本作は、そんなアイヌのシゲさん一家に密着したドキュメンタリーなのだが、なんと言ってもシゲさんはじめ取材対象の友人、ご家族の様子が生き生きと撮られていて素晴らしい。
アイヌ独特の鮭の捕り方「マレク漁」や「鹿猟」。「命」を「いただく」という概念と、その「命」への「感謝」。全ては「神」の恵みであり、神への感謝を忘れてはならない、という伝統を伝えていくということが、アイヌの心を伝えていくことに直結していることが素晴らしい。
上映終了後の舞台挨拶で監督の福永壮志さんの思いを聞いて更に感心した。
福永さんは「『倭人』として撮るので、アイヌへの偏見を助長するような絵は撮りたくないと思った」とし、「美化し過ぎちゃいけない」とも考えていたそうだ。
監督は北海道出身であったのだが、アメリカに留学した際、アメリカ人がネイティブアメリカンから略奪して定住したということを自覚していることに驚いて、北海道に住んでいてそんなことを考えたことがなかった自分を恥じたという。
なんて誠実な人だろうと、監督の人柄にも感動した。
今は「ゴールデンカムイ」の大ヒットを受けて、アイヌという存在が若い人たちにもある程度浸透してきているのではないだろうか。
それでも、国連の会議に出席したアイヌの女性を、あろうことか我が国の国会議員が「コスプレおばさん」と揶揄したり、今でもそんな偏見が続いていたりもする。
私も毎年訪れる「宮古島」で、失われつつある「言葉」や「踊り」などの文化の継承に努めている友人たちがいるが、日本の北と南の両端で同じ思いを持っている人たちがいることに感動する。
『アイヌプリ』、素晴らしいドキュメンタリーであった。『ゴールデンカムイ』などでアイヌに関心を持った方には、ぜひ見ていただきたい作品です。