ShojiTaniguchi

ドント・ムーブのShojiTaniguchiのレビュー・感想・評価

ドント・ムーブ(2024年製作の映画)
3.9
サム・ライミが製作に関わっているサスペンス映画で、脚本・監督・出演者ともに経験豊富で有名というわけではないけれど、とてもシンプルかつ完成度が高い作品で、その演出に惹き込まれる。

幼い息子を亡くした母が主人公で、その悲劇が起きた森へ彼女が訪れるが、そこで遭遇した謎の人物に筋弛緩剤を投与され、少しずつ体の自由が奪われていく中で生き延びようとする。
物語を動かしていく役割を担うべき主人公が徐々に動けなくなっていくという、今までありそうでなかった設定が面白く、鑑賞前にはどんな形で物語が動くのか (そもそも動かしようがあるのか) と思っていたけれど、予測不能ながらその都度なるほどと納得させられる展開の連続に驚かされた。

凶悪な人物からの逃亡という簡潔で明快な目的が設定されつつ、主人公が抱えていた精神的な苦痛からの脱却も物語の展開に組み込まれていて、劇中でのキャラクターアークの変遷とその終着点までの描き方がとても鮮やか。

派手なVFXはほとんどなく、一流俳優達が出演しているわけでもなく、大きな予算で作られた映画ではなさそうだけれど、演出レベルの高さや作品の面白さと予算の多寡はやはり関係ないのだと感じた。
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