菩薩

アラモベイの菩薩のレビュー・感想・評価

アラモベイ(1985年製作の映画)
3.9
ベトナム戦争、その後の新たな火種。脈々と現代に受け継がれる差別意識と移民排斥運動、聞いて呆れるアメリカン・ドリーム、この暗部を暴き出したのが低迷するフランス映画界を飛び出し新天地アメリカに活路を見出した時期のルイ・マルなのだから余計に面白い。サイゴン陥落後に共産政権の迫害を逃れアメリカに辿り着いたベトナム人達、彼等はそこで自分達のコミニュティを築き生活を始めるが、そこがなんとまぁ「テキサス」だって言う…。とは言え同じ様な事例は監督の本国フランスでもつい最近起きた訳だし、日本だってなんら例外では無い。安い賃金で良く働く彼等にまんまと生活圏を脅かされる既存コミニュティの住人達、とくりゃやることはただ一つ、まずは脅し、次に排除、それでも従わなければその手には銃が握られ、終わったはずの戦争は再び始まる事になる。「あんたらはベトナムに負けたんだろ?認めろよ。」、そんな風に言ってやりたくなるが、彼等は絶対にそんな事は認めない、だって俺らは白人でアングロ・サクソンでプロテスタントだから、俺らは神に選ばれた優れた人種であり、差別は聖書に規定された正しき行為だから、だとさ。ベトナム人達も決して正しい訳では無い、言葉が通じないからルールが分からない、分からないから当然守れない、じゃあ教えてあげなきゃいけないんだけど…って、これ本当に日本でも良く見かける事例だと思う。どこもかしかもこんなんこんなのばかりで人間でいる事自体に疲れてしまう。俺らはお前より優れてるんだ、そんな傲慢が数々の悲劇を生んできたんだって事を、人間はいつになったら自覚出来るのか。誰かに銃を向ければ当然身を守ろうと奴らも銃を向けてくる、まぁ滅びるまで勝手にやってりゃいいさと、呆れる以外にどうしようもない。
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