【マルコ・ドゥトラはラスト10分が面白いのだが】
第37回東京国際映画祭コンペティション作品に『狼チャイルド』のマルコ・ドゥトラ降臨。予習で『狼チャイルド』を観た時、あまりにもスローな展開でげんなりしつつも、ラスト10分が抱腹絶倒最高なものだったので期待していた。確かに、今回もラスト10分が面白いタイプではあるものの、これはかなり厳しい作品であった。
「黙示録」をテーマにした7章からなる物語。動物の死体処理を行うおっさんを中心に、終末の気配が漂うといった内容。軸として「不安」「宗教」が存在しており、人間が制御できない自然を強調するかのように、石の雨が定期的に街を襲う。人類史において、このような自然における不安を取り除く手法として宗教が用いられてきたわけだが、その宗教ですらどこか怪しげなものがあり、不安の吐口がない者の内面が夢に浮かび上がり、やがては現実のものとして表面化する。宗教サイドから見ると、それは「悪魔」であるが、ではその宗教はどうなのか?
露悪的な死体の羅列を通じて、宗教と人間心理の関係性を模索する意欲作であるのだが、全体的に話が散漫となっており、突然『タイタニック』のメロディに合わせてバトルが始まるところに面白さが凝縮されるのだが、これはテーマとの結びつきが弱いように感じられ、ただの面白描写止まりとなっているのが残念であった。