JLG、最後の肖像──東京国際映画祭2024TIFFシリーズ。ゴダールが死の数日前に次なる企画を練る様子を撮影したドキュメンタリー。シナリオといっても台詞とト書きで構成する一般的なシナリオではなく、写真を貼り付けたり手書きで文字を書いたりした白い紙を冊子上にまとめたもので、『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』でうつされるやつである。ゴダールのトレードマークといえば黒縁眼鏡と葉巻だが、本作冒頭で机に向かうゴダールは眼鏡はかけているけど葉巻はくわえていない。そのかわり手でBICのライターをクルクルさせる。作品内で引用するフッテージについてアシスタントに説明している最中にゴホゴホと咳き込むゴダールを見ながら、愛し続けた葉巻も吸えなくなってしまったのかと悲しい気持ちになっていたら、おもむろに吸いかけの葉巻を取り出して火をつけ始めたので少しホッとした。
本作、TIFFでは『Scénarios & Exposé du film annonce du film “Scénario”』と題して2作セットで上映されたが、『Exposé du film annonce du film “Scénario”』でゴダールが組み立てるシナリオは『Scénarios』とは別の企画らしい。
ジャン=リュック・ゴダール、映画のパラダイムを破壊し生み出し続けた人生。万感の思いで劇場を後にする。日本で未ソフト化の数本は鑑賞できていないのでいずれ必ず。特に『映画というささやかな商売の栄華と衰退』を観たい。