SHOHEI

青春デンデケデケデケのSHOHEIのレビュー・感想・評価

青春デンデケデケデケ(1992年製作の映画)
4.0
香川県観音寺に暮らす中学生ちっくんはラジオから流れてきたベンチャーズの「パイプライン」に電気的啓示を受ける。高校に進学し住職の息子で親友の合田、ロック好きの白井、吹奏楽部の岡下らとバンド「ロッキング・ホースメン」を結成したちっくんは楽器を手に入れるためアルバイトを始める。

60年代の観音寺を舞台に、ロックの洗礼を受けた高校生たちがバンドを結成し友情と思い出を深めていく青春映画。「デンデケデケデケ」はパイプラインのイントロのギターフレーズのこと。初々しい曲合わせの場面や文化祭前日の高揚感、そして高校生活も終わりにさしかかった頃の焦燥感が飾り気なく描かれ、全編通して使われる観音寺弁も印象的。当初は舞台を湘南に変更しようとしていたらしいが、監督の大林がこれに猛反対。原作の芦原すなおは大いに喜んだとか。訛り全開でも何を言っているか分からないというわけではなく、表情や文脈からおおよその意味を推測でき、役者の自然体な演技に良い影響を与えているように感じる。個人的なお気に入りは住職の息子合田で、やけに達観した性格と饒舌なしゃべりがおもしろい。演じるのは島田紳助の甥、大森嘉之だというから妙に納得。またリードギター担当の白井は若かりし浅野忠信が演じており、現在とは雰囲気の全く異なるメガネをかけた好青年っぷり。尾美としのりも主人公の兄として出演し、大林映画の常連として先輩風を吹かせる。挿入されるバンドメンバーの恋模様や恩師との別れをエモーショナルに引きずるわけではなく、むしろ過去のひとつの思い出として淡々と演出している点が青春の過ぎ去るスピードの速さを感じさせる。文化祭を成功させ完全燃焼した主人公ちっくんが仲間たちを繋ぎ止めていた音楽の存在を再確認するラストシーンは感動。
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