CHEBUNBUN

ファイヤー・オブ・ウィンドのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.7
【地を奪われた者たち】
残業がなかったので、急遽第37回東京国際映画祭にて実験映画『ファイヤー・オブ・ウィンド』を観た。

本作はポルトガル史における搾取の構図を絵画的構成の連続でもって抽象化していく内容である。その画の美しさ、単純に絵画的に還元されない構成に目を惹く。たとえば、ブドウを採取する者を草むら掻き分ける構図でカメラは捉える。天と地の境界からオケが放たれることで躍動感ある運動となる。また、点描画の再現として植物の粒度が活用され、死体をモザイク状に表す。橙と黒の境界線を手掛かりに導線を追うと、ヒトの存在を確認。認知と同時に陰からヒトが歩み寄る。

また、『ファイヤー・オブ・ウィンド』ではユニークな空間が採用されている。通常、「高みの見物」という言葉があるように、高所は搾取側を立たせるように思える。しかし、ここでは自然(=ブドウ)を扱う者が自然(=黒い牛)によって、木に追い込まれ地を踏めなくなる。つまり、不自由を象徴するために「高所」が使われているのだ。

そんな、農民が団結し、銃を取る。体制側だろう軍人すら仲間に加え、地を強制的に奪い去る。そして地の強奪に成功したら、銃を捨てる。この流れは警戒すべきだろう。暴力を都合よく使っているからだ。

この手の映画は合わないことが多いのだが、長所短所込みで面白く観た。
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