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幼な子のためのパヴァーヌのRinのレビュー・感想・評価

幼な子のためのパヴァーヌ(2024年製作の映画)
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マレーシアの赤ちゃんポスト、深夜当直のソーシャルワーカーは不可逆性に抗う──東京国際映画祭2024アジアの未来部門。マレーシアの赤ちゃんポスト。その赤ちゃんポストは、扉を閉めてから30秒経つと鍵がロックされて開くことができなくなるシステムになっている。ポストの上には残り秒数を示す電光掲示板まである。心変わりは許されない重い決断なのだ。その赤ちゃんポストでは働くソーシャルワーカーの女性が本作の主人公。彼女はレイプ被害にあった女性と知り合い心を通わせる。ポストには毎晩のように赤ちゃんが置かれる。異常な世界に耐え切れなくなったかのように、彼女はこれまでの静かな佇まいに似合わない身を賭した抵抗を見せる。

赤ちゃんポストの扉が不可逆になっていることと同じように、妊娠もレイプ被害もなかったことにはできない不可逆なものだ。彼女はその不可逆性に対して勇気を振り絞って反逆する。マレーシアの最大宗派はイスラム教であり、男女の権力勾配はそれこそ不可逆的に思えるほど社会に固定化されてしまっているのだと思う。そんな社会に命を懸けて一矢報いようとする彼女の行動には胸を締め付けられるものがあった。

でも、手のひらを返すようだけど正直退屈した。トリッキーな場所に置かれたカメラ、怪奇テイストの演出、少数民族の舞踊、イタコ芸。いろいろな方向にバラバラととっ散らかっていき、そのたびに集中力の糸を1本ずつ切られた気がした。変な映画は変な映画と思って観れば面白いもんだったりするが、本作はそのタイプでもなかったんだよな……

『ベイビー・ブローカー』よりは面白いかも。
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