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美晴に傘をのKUBOのレビュー・感想・評価

美晴に傘を(2025年製作の映画)
4.0
今日の試写は『美晴に傘を』オンライン試写。

詩人になりたいと家を出たきり帰ってこなかった息子が骨になって帰ってきた。父の元に遺骨を持って帰ってきたのは、会ったこともない息子の嫁と孫娘2人。ここから物語が始まる。

孫の「美晴」はちょっと特別。大きな音にびっくりしてしまったり、他人と上手くコミュニケーションが取れない、聴覚過敏を持った自閉症だ。

美晴を守るのは、亡くなったお父さんが絵本に書いてくれた色とりどりの「傘」たち。「嫌いな音」や「嘘」や「傷つける言葉」から美晴を守ってくれる。

亡くなったお父さんが「傘売りさん」になって現れるシーン、好きだなぁ。時々入る引きの絵も素晴らしい。

「善次」は息子が死んでも葬式にも出なかった頑固ジジイ。善次と息子の間にどんな過去があったのか?

そんな水と油のような善次と美晴がひとつ屋根の下で暮らし「家族」になっていく中で、お互いを縛っていた「何か」を乗り越えて、お互いが成長していく。

この終盤の編集がすごい!善次の、美晴の母の、美晴の、3人それぞれの思いが同時にひとつになっていく!升毅の、田中美里の、日髙麻鈴の熱演が素晴らしい。

ここまで書いてくると、何か難しい映画に思われるかもしれないが、実はこの映画、全体の雰囲気は山田洋次のような喜劇なんですよ。渋谷監督、山田洋次好きなのかな? 阿南健治の俳句(川柳?)がくだらなさ過ぎ!(笑)。

私は教師なので何度か自閉症に属する生徒とも接してきた。学校に来れなくて、家庭訪問に行っても、ベッドのカーテンの影から出てこない。何日もカーテン越しの会話を繰り返して、やっとカーテンから出てきてくれるようになるまではずいぶん時間がかかったのを覚えている。

ここで言う「カーテン」は美晴の「傘」なんだよね。

私は善次役の升毅さんに自分を重ねて、胸に迫るものがあった。

『美晴に傘を』は、来年2025年1月24日全国公開予定です。
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