Shelby

サンセット大通りのShelbyのレビュー・感想・評価

サンセット大通り(1950年製作の映画)
3.9
さすがビリーワイルダー。フィルム・ノワール映画として、悍ましいほど退廃的で悲壮感漂う仕上がり。

ストーリーとしては、売れない脚本家ジョーは借金取りから逃れるために入り込んだ古びた豪邸で、かつてのサイレント映画の名女優ノーマ・デズモンドと出会う。執事のマックスのえも言われぬ気味の悪さと、ペットであった猿の死体をベッドに寝かしている冒頭は今でも思い出すと胸がざわつく。かく言うジョーは、寝食の心配なく、金も稼げる絶好のチャンスということと、ノーマの強引な誘いであれよあれよと、ノーマの豪邸に住むことに。
自分はまだ、映画界に返り咲けると信じてやまないノーマ。しかし、女として寂しさを埋めてくれる対象を欲していた彼女は、転がり込んできたジョーを愛するようになる。徐々に私生活を奪われていくジョー。とある夜に、遂に事件は起きる。

映し出される豪華な部屋や、絢爛な装飾の数々。にも関わらず、終始薄気味悪い空間が映像を支配する。ノーマを取り巻く空間が歪なのだ。マックスと2人であれだけの豪邸に住んでいながら、1歩も外に出ず、かつての自分の美貌をうっとりと眺めるノーマ。虚構と現実の境目が曖昧になり始め、危うい精神状態に陥り始める。

ノーマ・デズモンド演じるグロリアスワンソンは本作のノーマ同様、サイレント映画の名女優だったという衝撃の事実。この辺りからキャスティングにすらも、ビリーワイルダーの拘りが窺える。

ラストで、殺人を犯したノーマが報道陣のフラッシュを受けながら、自宅の螺旋階段を降りるシーン。まるで劇場の階段を優雅に降りるように、大仰な身振り手振りで、そして、栄華を極めたノーマの終わりを告げるように、彼女の顔をクローズアップして締めるラストは圧巻。

年老いたことによる醜さを物怖じすることなく、カメラの前で演技を続けるノーマに狂気じみたものを感じた。栄枯盛衰という言葉がぴったりの作品。
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