フラハティ

ボウリング・フォー・コロンバインのフラハティのレビュー・感想・評価

3.4
アメリカは世界最高の国。


マイケル・ムーア監督による、銃社会とアメリカのお話。
なぜアメリカでは銃による犯罪が減ることはないのか。
マイケル・ムーアという名前を世界に広めたのも本作だろう。

アメリカで起きた「コロンバイン高校銃乱射事件」により、銃の脅威はよりいっそう高まることになる。
ティーンエイジャーの銃による殺人は、彼らに対する“害悪な娯楽”によるものだ。
アクション映画やホラー映画での残酷な描写。
ゲームによる悪影響。
サウスパーク。
マリリン・マンソンとロック。
すべてそれらが原因なんだって。
ほんとうにそうなのか?


アメリカは血にまみれた歴史を持っているという。
200年にもおける奴隷制度。
多様な人種が集うアメリカ。
レイシストが根強いアメリカ。
子どもでもどこでも銃を買えるアメリカ。
「偉大な過去の白人によって、今のアメリカがある。」
じゃあおぞましい歴史を持ったイギリスは恐ろしいことになっているのか?
ヒトラーを生み出したドイツもすごいことになっているのか?

同じように銃を持っている国でも、血にまみれた過去を持った国でも、アメリカほど銃による殺害は多くない。
じゃあなぜアメリカでは、ここまで銃というものが広まっていったのか。
ボウリングのピンのように、次々と倒されていくアメリカ社会の実態。
ボウリングの球はマイケル・ムーアってところか。
この当時のアメリカがどうなっているのかや、アメリカの銃の歴史が簡潔に分かりやすくまとめられているので、アメリカにおける銃の歴史を学ぶ機会にはうってつけだと思う。
個人的にはアメリカの社会保障とか労働問題についても知りたい。


ある問題が発生したときに、必ず原因というものは存在している。
表面的なものを取り除くのは簡単だが、もっと奥深く、根深いところに悪夢のような現実は存在している。
「メディアは恐怖を植え付ける。」
本当の原因ってなんだろう。
これだ!と決めつけられるほど、単純じゃないんだね。
物事は一つの視点で見るだけでは、ただの批判に終わってしまう。
多角的な視点で見ることで、全容が見え始め自分の無知さを痛感することになる。
アメリカでは、自分で自分の身を守らなければならない。
アメリカ人は好戦的で、子供の頃から銃に触れる機会は多い。
一括りにするのは違うんだろうけど。


勘違いしてはいけないのは、銃自体が悪いわけでもなく、銃があったおかげで救われた命もあるってこと。
銃をアメリカ社会からなくせばいいという短絡的な考え方は、おそらく上手くいかない。
じゃあどうすべきかというのは、問題が幾重にも重なりあっているから難しい。
人種、メディア、恐怖、戦争、不安定な世界、大統領、利益…。
どこから手をつけていいのかわからないよね。
銃で自由を獲得したアメリカにとっては、銃そのものが自由の象徴でもあるんだよね。


※本作はドキュメンタリーといっても、マイケル・ムーア監督の思想とかも入っているわけなので、純粋にすべてを鵜呑みにするのも考えものかもしれない。
これはあくまでもドキュメンタリー“映画”なので、マイケル・ムーア監督の作品であることは理解しておかないと。
ドキュメンタリーの深さは、監督の考察の深さとも関連しているので、本作はかなり完成度の高いドキュメンタリーなんじゃないかな。
でも実際に自分の目で見て、学ぶことが大事!
本作もそういった意味合いで作られた部分もあるだろうしね。
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