ななし

ボウリング・フォー・コロンバインのななしのレビュー・感想・評価

4.0

インタビュー、ニュース映像などありとあらゆる素材を駆使して、ひとつの結論に収束していく手法は非常にスリリング。

だが、ノンフィクションにおいてスリリングであることは、訴求力を高めるとともに、観客を過剰にエモーションにする危険性もあるので注意が必要。

その点、カナダ最高、アメリカ最悪のくだりは、ある程度、割り引いて受け止めていたほうが無難。

映画としては、コロンバイン銃乱射事件を受けて、ムーア監督がひとつの問いを立ててあたりから、俄然おもしろくなる。

すなわち、銃を持つ文化があるほかの国と比べて(特に狩猟文化の影響で国民の銃の普及率が極めて高いカナダと比べて)、なぜアメリカでは銃犯罪の発生率が高いのか。

それをムーアは、アメリカ社会における黒人への恐怖という差別意識が歪な形で顕在化したゆえだと主張する。

隣人を信用できない米国人はどんどんと銃を買い漁り、家の鍵を二重三重と強固にしていく。

隣人の恐怖を語る米国人の姿は、世界の警察を自称し、大量破壊兵器の脅威を煽る為政者の姿と重なっていく。
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