【太陽が眩しかったから】
ルキノ・ヴィスコンティ監督×アルベール・カミュ原作×マルチェロ・マストロヤンニ×アンナ・カリーナ共演の作品
〈あらすじ〉
1930年代のアルジェにて、殺人の罪で裁判にかけられたムルソー。友人と騒ぎに巻き込まれ、偶然持っていたピストルでアラブ人を殺した彼は、殺害の理由について太陽が眩しかったからという謎の発言をする…。
〈所感〉
フランスの不条理がテーマの作品で知られる作家アルベール・カミュの代表作が下敷きとあって、原作さながらで十二分な出来だと思う。マルチェロ・マストロヤンニは最近『黒い瞳』で円熟した演技を見たばかりだが、若い頃からあまり雰囲気が変わってない様子。ママンが死んでも、恋人と愛し合っていても、人を殺してもどこか他人事で、ありのままに罪を受けいれ、反論しようとする気力も無い主人公ムルソーの姿がどこか人間の本質を突いているように感じた。後半はほぼ裁判所が舞台だが、求刑が定まると、あとは己と見つめ合い、独房で死を迎え入れる準備をする。本読んでいる時は全くムルソーに感情移入できなかったけど、映像だとなんとなくわかるなぁ。淡々と語られる無機質の悲劇の中に、海と太陽といったポジティブな風景のイメージが交差し、人間のアンビバレント、アンバランスさを描いているようにも思う。妥協を許さない荘厳で耽美的な作風のヴィスコンティと一流の文学がマッチしており、流石だと唸らされた。