Mikiyoshi1986

異邦人のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

異邦人(1967年製作の映画)
3.6
本日11月7日はフランス文学において「不条理」の世界を拓いた偉大なるノーベル文学賞作家アルベール・カミュの生誕103周年記念日。

「きょう、ママンが死んだ」「太陽が眩しかったから」
このあまりにも有名な一節で知られる彼の代表作「異邦人」は、私が学生の時分に大変強い影響を受けた作品のひとつであり、今現在も座右の書のひとつに名を連ねているバイブルであります。

そのカミュの名著をイタリアの巨匠ヴィスコンティ監督が実写映画化に挑んだ意欲作。
主人公ムルソーにはマルチェロ・マストロヤンニ、恋人マリーはアンナ・カリーナという豪華キャストを配し、我々を30年代のフランス領アルジェリアへと誘います。

ムルソーは信仰以上に絶対的な真理をその内に抱いており、感覚的に(まるで動物みたく本能的に)実直に物事と対峙する、若者としては至ってリアリズムの極北のような男。
しかし他人から見ると彼の無感動な人格や無神論的な面持ちは「人間味に欠けた異邦人」に写らなくもなく、それはある事件を切っ掛けに「不条理」となって彼の運命を大きく左右することに。
彼は全体主義の罠にまんまとハマり、法と神の2つの「善悪」によって他意的に断罪されてゆくのです。

私のムルソーのイメージは読んだ当初から「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンの雰囲気とピッタリ合致していて、
逆にヴィスコンティはなぜマストロヤンニにこの役をさせたのかがずっと疑問でした。
というのもマストロヤンニに20代後半を演じさせるにはあまりにも老けすぎており、恰幅もかなりいいし、何より水着姿が似合わなすぎる…。
ドロンとヴィスコンティは「山猫」を境に決別したと云われていますが(たしかギャラ問題?)、まじでドロンがムルソーだったら完璧なのにぃ…と常々思っちゃいますね。

そして私が特に好きな司祭と対峙するシーンが少々雑に描かれているのも気になっちゃう。裁判よりもむしろここが重要なシーンだと思うので、「ベニスに死す」みたくもっと力を入れて丁寧に撮って欲しかった。
司祭もイメージよりだいぶ若すぎるような…。

ということで、かのヴィスコンティでさえも如何せん作品を持て余した感じが否めませんが、
それもこれも原作が難解かつ傑作すぎるからしょうがないってことで納得!
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