ノリオ

昴-スバル-のノリオのレビュー・感想・評価

昴-スバル-(2008年製作の映画)
1.7
曽田正人の大人気バレエ漫画の実写映画化。

監督はリー・チーガイ、プロデューサーはビル・コン。


双子の姉弟、宮本すばる(黒木メイサ)と和馬は幼いころからバレエ好きだったが、ある日和馬は脳腫瘍(しゅよう)で倒れる。彼を元気付けようとすばるは毎日のように即興のダンスを踊るが、和馬は亡くなってしまう。傷心のすばるは、ふと足を踏み入れた小劇場パレ・ガルニエのオーナー五十嵐鈴(桃井かおり)との出会いにより、バレエにのめり込んでいく。


曽田正人の原作の中で『昴-スバル-』は、とりわけ実写化が難しい作品だと思う。


すばるはバレエの天才である。

この天才バレリーナを演じる上でもっとも必要なことは、バレリーナとしての実力だけだろう。

黒木メイサはこの映画のために三ヶ月間の猛特訓をして、トウシューズで立てるようになったのだという。
確かに素人が三ヶ月間でトウシューズで立てるようになるのはかなりの努力が必要だったと思う。

しかし、求められているのはそういうことではない。


素人をどんなにうまく踊っているように見せようとしても、それではこの映画で伝えるべきことは絶対に伝えることは出来ない。
断言してもいい。



宮本すばるは不器用でエゴイスティックで情緒不安定だが、彼女の踊りは人に大きな感動をもたらす。
絶対的で圧倒的な才能の前に人は自らを凡人と認めざるを得ないのだ。

生が躍動し空間が震える。
素晴らしいバレエとは理屈ではない。
専門的な知識がなくともその素晴らしさは理解できる。


たかだが三ヶ月間の練習でそれほどの表現ができるわけがない。


それが出来るのは先天的に才能を持ち、尚かつ三歳から研鑽を積んだほんの一握りの人間だけだ。


宮本すばる役に必要なのは知名度でも演技力でもない。
圧倒的なバレエの才能だけだ。

もし製作陣がそのことを本当に理解し、最優先事項として考えることができたのならば『昴-スバル- 』は傑作になったかもしれない。
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