とりん

猿の惑星・征服のとりんのレビュー・感想・評価

猿の惑星・征服(1972年製作の映画)
3.4
2021年9本目

未来からやってきたコーネリアス、ジーラが殺されて20年、その息子シーザーは密かにサーカス団の一員として生きていた。20年間で猿はペット、そして奴隷となっていた。ぞんざいに扱われる仲間たちを見てシーザーは立ち上がる。

前作で語られた猿が人間を支配する歴史をそのまま繰り返しているようにしか見えない愚かさがなんとも。
先頭に立つ猿さえいなければ問題ないのかもしれないが、あまりにも短絡的な気がしなくもない。
しかし犬や猫などペット系動物が絶滅したとき、猿をペットとするのかは謎だな。
ただ人間の労働力削減のために猿にやらせるというのは、今でこそ機械が台頭しているが、そうでなければあり得る話かもしれない。それこそこの作品が作られた70年代なら、こういう未来を想像していても不思議ではない。
歴史を知ってなお繰り返すのかという疑問と愚かさは抜けないが。

本作では直球で人種差別を訴える内容になっていると言っても過言ではないだろう。
さらには奴隷制度まで持ち出していることから、これまで黒歴史とされてきた部分を、こんなにも強く打ち出している。
いくら猿だとしても、人間の祖先でもあるし、同じ動物の立場で、人間に近いものをよくこんな風に扱えるなと思う。観ていて心が苦しくなる。
どこの時代にも猿(別人種)を理解しようとする人はいてくれて、しかも今回それが黒人というのがまたキーである。
今よりさらに黒人差別が深刻化していた時代にこの設定はあまりにも強烈だと思う。
最後には仕方なく革命を起こしたとも取れる流れが、ジャンヌ・ダルクのようでもある。
予算の都合によるスケールの縮小とされていたが、久々の大量の猿、むしろこれまでで1番というくらい出てきて、そこまでスケールの狭さは感じなかった。
まぁこれだけの問題をひとつの街で完結しているのはそういうところからか。
とりん

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