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シェナンドー河のtjZeroのレビュー・感想・評価

シェナンドー河(1965年製作の映画)
3.8
南北戦争3年目のヴァージニア州。
チャールズ・アンダーソン(ジェームズ・スチュワート)は早くに妻を亡くしたが、奴隷に頼らずに7人の子どもたちと共に農場を維持してきた。
戦争とは距離を置き、息子たちへの徴兵や馬の徴用にも応じなかったアンダーソンだったが、末の息子が北軍の捕虜となったことから、関わらざるを得なくなる…。

このタイトルでスチュワート主演だからゴリゴリの西部劇を予想してたんだけど、南北戦争が舞台の変化球亜種だった。

ただ、昔ながらのやり方で農場を経営している主人公一家はどこか”時代遅れ”で、開拓者スピリットを維持しているので、西部劇テイストは濃厚。

捕虜となった末っ子を奪還するために、馬を連ねて捜索する一家の姿は、インディアンにさらわれた身内を助けに行く西部劇そのままだし、捕虜を移送する汽車をハイジャックする”大列車強盗”まがいのシーンもある。

そんな西部劇テイストの豪快で爽快な前半とは打って変わり、後半では戦争の悲劇がヒタヒタと押し寄せてくる。
この時代の作品だから直截に惨劇を描写はしないんだけど、見えないからこそ観客にどれだけ酷い事が行なわれたかを想像させ、胸を締めつけられる。
西部劇の世界に戦争が忍びこんでくる様を描いて、時代の移り変わりをあざやかなコントラストで表現している。

前半の”優しき家庭人”から、後半の”怒れる男”へと、瞬時にギアが入れ替わるスチュワートの演技もお見事。
役者のタイプは異なるかもしれないけど、われらが(高倉)健さんがドスを抜き放つ時の凄みにも通じるものがあった。

アメリカン・ニューシネマがお好きなかたには、『卒業』や『明日に向かって撃て!』のキャサリン・ロスのデビュー作でもあるので要チェック。
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