こまだこま

薬指の標本のこまだこまのレビュー・感想・評価

薬指の標本(2004年製作の映画)
3.7
全体を通して、湿っぽい蒸し暑い梅雨の浴室のような空気感だった。主人公の首筋の汗ばんだ質感や、髪の後れ毛がしっとりと首を伝っている様子が艶やかだった。主人公がラボのオーナーに想いを寄せ、実際に抱かれるにつれ少しずつ変化していて、少女から女性へと羽化していく様を俯瞰している気持ちになった。
女性にヒールの靴をプレゼントするってキザだし、意味合いとしては足を捕えて動けなくするようでもあるけれど、ロマンチック。恋に落ちて逃れられなくなっている主人公を見ていると、蜘蛛の巣にかかった蝶を彷彿とさせられた。
また、同室の男性とのすれ違いつつお互いを意識する距離感や、曖昧で鑑賞者に想像を委ねるような含みを持たせた終わり方も魅力的だった。作品のすべての登場人物に、その人にしかない過去や物語があるということを意識させられた映画だった。
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