ziko

Love Letterのzikoのネタバレレビュー・内容・結末

Love Letter(1995年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「余白」
知恵の輪みたいに、どっか引っかかるところが続いた40分。それは「渡辺博子と藤井樹が一人二役」だという簡単なトリックなのだが、あえて描写を伏せることで明確に説明されるまでわからなかった。

腕にペンで藤井樹の住所を書くシーンは、入れ墨のように、とても大切なことを刻んでいるみたい。
暗闇の自転車置き場で、自転車のライトを灯りの代わりにするシーンもそう。
きっと今だったらスマホ一つでどちらも片付けてしまうんだろうなと思うと、少し寂しくはなる。

秋葉のような「わがままな優しさ」に少し嫉妬した。当たり障りない人の良さではない彼の行動が、渡辺博子を結果として救う。いい人で片付けられがちな自分だったら、彼女のひとときの幸せを見守ることができても、新しい幸せは作ることができないんだろうなぁ、と。

私の知らない彼がそこにはいた。
(藤井樹と似てるから)一目惚れには理由があった
そう語る渡辺博子の悲しそうなセリフはなんとなく頭の中に残り続けた。
ただ、死後の世界から来てる手紙というファンタジーを否定し、一目惚れという運命を否定した先に、ありのままを受け入れるという渡辺博子の選択が待っているんじゃないかと思わずにはいられない(思い出を返却したことから)

洋画のような画面いっぱいに埋め尽くされた情報ではない、余白の美に溢れた古き良き邦画だった。
ziko

ziko