図書カードなんて懐かしい。自分の前に借りた人が、何年も前の、しかも年長の人だった時、その本が少しだけ特別になって、少しだけ大切に読もうと思った。
灯油の匂いに包まれながら、夢か現実か回想か、わからなくなるような泡沫の恋。男だから女だからとか関係なく、どちらもそれぞれ面倒です。不器用で鈍感で繊細で方向音痴でタイミングブスで、みんなみんな優しい。
ひんやりと冷たい病院の壁、電車のサッシ、赤いポスト。それでも日本の雪は、確かに温かい。雪解けの春には、優しいみんなが少しずつ、大丈夫になっていますように。