愛鳥家ハチ

Love Letterの愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

Love Letter(1995年製作の映画)
3.5
岩井俊二監督による初長編作品。手紙を通じて亡き婚約者を想う物語。脚本も岩井監督が手掛けており、監督好みのモチーフがいくつも盛り込まれていたように思います。雰囲気のある映像も流石でした。手紙というアナログなコミュニケーションがまだまだ主流だった頃の物語ですが、ワープロやパソコン(?)も登場してきており、その意味では、インターネット普及前夜の空気を感じ取れる貴重な作品ともいえましょうか。

ーー俳優
 特筆すべきは、一人二役の中山美穂の演じ分けです。かたや終始うつむき加減で影のある表情を浮かべながら、もう一方では、素朴で自然体の演技を見せてくれています。さらに凄いのは、二役ともに、雪の結晶を思わせる儚げで透き通った魅力を放っていたことです。小樽の雪景色に見事に溶け込んでいたように思います。
 また、豊川悦司の軽妙な演技が沈みがちな本作のトーンを明るくさせ、若き日の柏原崇は端正な顔立ちで抜群の存在感を発揮。酒井美紀は裏表のない素直な少女を好演していました。監督をはじめキャスティングに携わった方の慧眼には感服です。

ーー総評
 本作は、観る者の感情を右へ左へと揺さぶってくる激情型の作品ではもちろんありませんが、ひんやりとした冬の世界で、じんわりとした人の温かさに触れられる映画だといえます。
愛鳥家ハチ

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