中山美穂よりも先に加賀まりこを「可愛い」と思ってしまった。意地悪ばあさんの印象しかなかったから、亡き息子の嫁さんを未だに可愛がる姑役が短い出番ながらもこの作品の「誰も傷つけない優しさ」を象徴していて良かった。
後に岩井俊二はこの「ラブレター」で描いた中学時代を「ひょっとしたら自分の中で美化されたものかもしれない」として、「リリイシュシュのすべて」を撮ることになる。たしかに自分にとっても「ラブレター」で描かれた中学時代というのは少し優しすぎるきらいがある。
中山美穂の一人二役は個人的には樹の方が好みかな。もう一方の今にも萎れちゃいそうな弱々しい女性って、自分は苦手だ。
タイトルであるところの「ラブレター」の真の意味を画一発で見せるラストのカタルシスは映画ならでは。
あのイノセンスは文章では表現できない。
説明的になっちゃうから。
あれだけニブチンな樹がようやく彼の想いに気がついて、女子中学生たちを前に動揺して鼻をすするラストカットは逸品。
「拝啓 渡辺博子様 やっぱり照れくさくて この手紙は出せません」
最高の余韻である。