櫻イミト

マークスの山の櫻イミトのレビュー・感想・評価

マークスの山(1995年製作の映画)
3.3
高村薫の直木賞受賞推理小説(1993)の映画化。

1990年前後の邦画の好きなところと嫌いなところが混在していた。好きなところは前半の刑事たちのピリついた関係描写。主役・中井貴一の同僚は西島秀俊、遠藤憲一、古尾谷雅人、岩松了、塩見三省、萩原流行、寺島進、小木茂光、みんな若くイラついている。序盤の殺人現場実況見分シーンで彼らが次々と出入りする長回しシーンが秀逸で崔洋一監督作の中でも屈指の名演出だと思う。

しかし中盤からの犯人サイド、萩原聖人と名取裕子の描き方が嫌いだった。当時の邦画にありがちな女の情念(?)を表現すること=作家性という妄信は何なのか?名取裕子は淫乱の如くに演出され、それを正当化するために萩原聖人がピュアな馬鹿にキャラ付けされている。本作での犯行には相応な狡猾さが必要であり、その点でキャラ設定に無理が出来てしまっている。

最後まで刑事中心に進めていれば傑作になったかもしれない。過剰な性描写とバイオレンス表現に力点と時間が割かれたために、結局はいかにも崔洋一監督らしい映画との印象が残った。
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