Ren

ゲームのRenのレビュー・感想・評価

ゲーム(1997年製作の映画)
3.5
ある程度キャリアがあって、かつ作品にハズレの無い監督は誰?と聞かれたら迷わずデヴィッド・フィンチャーと答えたい。今作は初鑑賞で、勝手にデスゲームものかと思っていたら『ダイ・ハード3』のような市街地巻き込まれサスペンスだった。しっかり面白い!

フィンチャーの初期2大代表作である『セブン』から『ファイト・クラブ』への過渡期の作品として腑に落ちすぎるほど腑に落ちる出来栄え。前者の重厚な直球サスペンスの要素は引き継ぎながら、後者のように構造に仕掛けが施された話になっている。

正直自分の苦手な「どんでん返しのためのどんでん返し」にぎりぎりなっていた気はする。が、それまでの嘘か本当か謎なまま進む不安定さや、話がどう転ぶか分からないスリルとライド感で楽しめたのでOK。どんでん返し映画である以前に、黒幕の分からない巨大な何かから逃げ続けるサスペンスとして、ジャンル映画的な見せ場が多い。

財産も地位も獲得した富豪の男は普段から周囲の人間に横暴な態度を取るが、一度ゲームに巻き込まれたら彼のほうが翻弄される弱者になる。
全てを剥ぎ取られすっからかんになったニコラス(マイケル・ダグラス)の「過去との決別」の話。なので本質の部分は『メメント』にも近いのかなと思った。決別できなかったか/できたかの違いはあれど。

ラストのネタバラシ自体も、そっちか!→そっちか!な展開でしっかり驚くことができた。
「レストランで急に電気が消え店員さんが歌い出しケーキが出てくるサプライズは死んでもやってほしくない(恋人が仮にもそんなことしてきたら破局レベル)」という私のような人へ捧げる映画。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










「信頼できない語り手」オチとかだったら嫌だな〜と思っていたけど、そうはならなかっただけで良かったと胸を撫で下ろした。
CRSは実在した、で一回目の驚き。そしてニコラスが疑心暗鬼で弟を殺めてしまった胸糞エンドか....からのそれすら仕組まれたものだったという二回目の驚き。
鮮やかー!と思う一方で、そんなに上手く行くわけねえだろと毒突きたくもなってしまった。『コンフィデンスマンJP』かよ、ケッと一瞬思いましたが、初めて『スティング』を観た時の興奮を思い出し、そんなネガティブな思いは消え単純にエンタメとして面白い映画だったなという最終評価に落ち着く。

父の最後の肩身である腕時計までもを売り払い、真っ新になったニコラスだが、コンラッド(ショーン・ペン)は、どこか父親のコピーのように働いていた彼を生まれ変わらせることに成功する。父親の享年と同じ48歳の誕生日に。
クリスティーン(デボラ・カーラ・アンガー)を食事に誘えるくらい人に興味を持ち始めたニコラス。彼の人生の第二章が始まる。

↑頼んでもいないサプライズで人格を変えられることに全く納得していないので、この段落で書いたことには別に共感していない。というか、思想的には結構ヤバいと思う。
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