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魍魎の匣のmatchypotterのレビュー・感想・評価

魍魎の匣(2007年製作の映画)
3.3
京極夏彦原作、『魍魎の匣』。
昔観た時は何の話かさっぱりわからなかったけど、すげぇ話だと言うことがわかった。

そして、お金の掛け方が凄まじい。
エンドロールでやっぱりって思ったけど中国とかでもロケしてる。

そもそも、戦時下と戦後間もない過渡期の時代背景なので、その再現にどれだけ費用を注ぎ込んだのか。
エキストラの数やセットの規模も含めて圧巻。
この映画にかける熱意というか旧ジェネオンとショウゲートの闘志を感じる。

極め付けはキャスト。
陰陽道由来の“祓い師”、堤真一。
戦時中の出来事がきっかけで人の記憶を読み解ける探偵、阿部寛。
彼らと古くからの盟友で売れない作家、椎名桔平。

この3人と腐れ縁の憎まれ口叩く刑事、宮迫博之。
その宮迫を慕いつつ、軽いノリの刑事、堀部圭亮。

彼らに振り回されてやんや騒がしいカストリ雑誌の編集者、マギー。

戦時中から謎の怪しい研究をし始めて1つのテーマに取り憑かれる科学者、柄本明。
その研究に触れてしまって人生おかしくなった狂気の作家、宮藤官九郎。

その狭間で娘を病的に守りたい大女優、黒木瞳。

堤真一の妹で、ウダウダ面倒な論争を繰り広げる男たちと行動にともにする大胆な女、田中麗奈。
麗奈ちゃん、可愛いわぁ。

阿部寛の探偵助手、荒川良々。

謎の豪華なちょい役。笹野高史、篠原涼子。

とにかく、この歴史背景と豪華キャスト。
これに加えて、陰陽道、霊感、宗教、マッドサイエンス、と盛り沢山の要素に次ぐ要素。

完全に情報量の交通渋滞。
これに前回は完全にやられてただただ混乱して終わっけど、今回は少しわかった。

と言うか、この結末、この匣の建物の最終的な真相、姿を理解した時に、この話が絶望的にぶっ飛んでることに気付く。
だけど、ちょっと話が飲み込めて、「マジかぁ!」って思えたのは自分が進歩できた気がした。

女子学生2人で「月夜に凧揚げ」がどうとか、「は?」って思うし、実際凧揚げ自体は凧揚げでなくてもよかった気はする。

など、「これは何?」を理解するよりも「これはこういうもんだ」と、この世界観を理解することよりも、慣れて流されるかのように、主要メンバーの掛け合いとかをフフフと観ていくと、どっかのタイミングで馴染む。

京極夏彦の文学的な戦後ミステリー小説なので、そんなシンプルなわけはなく、“魍魎”なるぼんやりしたものに囚われ、追い、求め、惑わされ、解き明かすわけで、そもそもが掴みどころのないものを掴むような話。

匣、匣、となんでそんな匣なのか。
魍魎、魍魎となんでそんな魍魎なのか。

偽の祈りも効果が出てしまえばそれは本当の祈りになり、気味の悪い研究でも成功してしまえば科学になる。

この辺の、確かなものと不確かなものの端境にいて、あえてぼんやりして、導くようで惑わすような、、、魍魎。

みたいな、映画。
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