KnightsofOdessa

アクメッド王子の冒険のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

アクメッド王子の冒険(1927年製作の映画)
4.5
No.32["火の山の魔女"強くね] 90点

現存する世界初の長編アニメーションである本作品はドイツで作られ、しかも女性監督であるという二重の驚きなのだが、レベルとしては今の作品をも凌駕出来るほど高い。

舞台は中世の中東世界。カリフの息子アクメッドとその妹ディナルザーデのもとに悪い魔術師がやってきて、空飛ぶ馬と引き換えにディナルザーデを要求する。アクメッドは魔術師の言うまま馬に乗せられ、王国を飛び出してしまう。ワクワクという島に降り立ったアクメッドはその地の女王パリバヌーに惚れて誘拐する。という倫理的にだいぶ怪しい超展開の連続。勿論最後は大団円なのだが、ところどころ伏線が雑なシーンもある。

ただ、影絵で3年も掛けて作ったという本作品の熱量は行き当たりばったりな展開も十二分に吹き飛ばせる。人間の複雑な動き、魔術師の変身するグネグネとした動きには一切無駄がないし、魔物や宮殿の精巧な作りは表現主義の名残が香る美しい情景だ。切り絵でしか作れない世界がここにはある。

でも、アクメッド王子あんまり活躍しないんだよね。途中で会う”火の山の魔女”がいいヤツ&強すぎて見せ場はほぼ彼女のもの。
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