O深読み過ぎるくん

出発のO深読み過ぎるくんのレビュー・感想・評価

出発(1967年製作の映画)
4.9
2回目の鑑賞。どういうわけか、僕があの場面もこの場面も克明に記憶しているというのも意にかけぬ程の鮮やかさを見せてくれた。
桜の花なんてものはくどいほど咲き乱れてはその花弁をしばしば邪魔になるほどまでに降り積もらすのに、そんなのを毎年毎年繰り返しているのに、それは不思議にも確かに人の心を揺さぶり続ける。あるいは、コンクリートのゴツゴツした道の黒い肌に積もり荒んでゆく薄桃色の花弁、その若々しさ、瑞々しさを踏みにじって前へと歩みを進める人間の悲しさ、そういうものを他にないほど露骨に感じさせてしまうのもまた桜の花だろう。
この映画を見るという事は、咲き乱れ散りゆく桜の花の残像、十数年もしくは50年の隔たりを経てその影を追体験する事の喜び、あるいはそれを踏みにじる絶望だ。でも、どうしてそんなものがこれほど瑞々しく心に沁みてくるのだろうか。全く映画というものは捉えようのない影の残像のモンタージュに過ぎぬというのに、あの憎々しくも健気な笑い声が脳裏に焼き付いては僕の心を捉えて離そうとしない。