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ドッグ・レディのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ドッグ・レディ(2015年製作の映画)
4.0
【流離う犬の化身】
ユーロスペースにて開催中のラウラ・シタレラ特集で『ドッグ・レディ』を観た。かなり変わった作品ながらも、『オステンデ』と重ねると見えてくるものがある。

本作は全編流離う野良犬と女の生活を追う。セリフはほとんどなく、プリミティブな生活を送るドッグ・レディの運動をじっくり観察する必要がある。

その生活は観客の予想を裏切る。自然に身を投じ、時折都会へやってきてお溢れ施しをもらう訳だが、しっかり現代医療のお世話になり薬を処方してもらったり、人の家に泊まり衣食住を他者と共にする場面がある。

彼女に嫌がらせする存在は一度だけ映る。それ以外は野良犬に接するかのように社会は彼女の存在を受容するのだ。

『オステンデ』でも旅行者として匿名的他者から眼差しを向けようとする女に社会が薄く関わりを持つ内容だった。『ドッグ・レディ』も同様に、プリミティブライフ/モダンライフを分離せず融和した関係性を描いている。その心はアニエス・ヴァルダが『落穂拾い』で提示したあるべき社会の多様性を継承したものといえよう。
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