Jeffrey

スリ(掏摸)のJeffreyのレビュー・感想・評価

スリ(掏摸)(1959年製作の映画)
4.5
‪「スリ」‬

‪本作は貧しい青年がスリを行う日々を描いた作品で観た人なら誰もが思うあの地下鉄=列車の中での巧妙な手の動きのシーン…芸術性の感動覚える。スリはブレッソン作品の中で多く扱われる孤独を徹底したリアリズムで映す。孤独では少女ムシ…手のカットでは白夜、バルタ…など驚く演出ばかりだ。‬本作はとにかく見て欲しい傑作の1つ!ロベールブレッソン作品に嫌いな作品は何一つない!

‪冒頭、執筆する手の描写。

一人称の語り、競馬場で女性の鞄から財布をスル青年。女性、鞄、彼の積み重ねショット。

緊張感ある表情、一点を見つめる、1分後に逮捕。地下鉄、新聞紙、スリ決行。

今、鉄格子から面談が始まる…

本作はR.ブレッソンの人混みを利用して犯罪をするスリを主人公の青年の内面と共に犯行と更生を行き来する内容で、監督、脚本、台詞をブレッソンが担当した芸術に長けた59年の傑作。

久々に見返したが76分と言う中で、あれだけ濃密なテーマ性をあの素晴らしいパリの街並みと駅だけのロケで撮影したスタッフ軍には凄いとしか言えない。

さて、物語は青年ミシェルが競馬場の外で女性のバックから金を盗み取る。だが彼はすぐに逮捕され証拠不十分で釈放されるも今度は地下鉄の駅で新聞紙を利用したスリを目撃する。

その手口を模倣する様に彼は練習を重ね始める。そしてとある日、スリを開始する。スリを試す日々の中で彼はとある男に出会う…と簡単に言うとこうで、主人公を演じた素人俳優のマルタン・ラサールの無表情な芝居には驚かされる。

それとこの映画は”眼差し“を強調するものだとも思える。

彼の目線の先をカメラは只管映し出すのだ。

世の中には自分のスタイルに一貫性を持たせ、その表現様式を極める作家がいる。

それはK.ローチの様な徹底的に社会的地位の低い人間をブレずに描き続ける監督や小津安二郎のように日本家族の姿をひたすら同じ空間で描き続ける監督や北野武のような暴力映画を描き続ける監督やE.ロメールの様なバカンスをテーマにした作品を描いたり、

タランティーノの様な厳選された音楽を第2の脚本と化し、それを観客に見せ続ける監督などが居る。

ではブレッソンはどうか…彼の場合は小宇宙の中で主人公の内面を浮彫りにし、演劇的要素、先程言った彼が選ぶモデルとされる素人の眼差しを随所に作品に入れてる。

そして代名詞である”手“の動作をクローズアップし続けてきた一貫性だ。

小宇宙的な村を舞台にした田舎司祭やバルタザール、監獄と言う小宇宙を舞台にした抵抗、ジャンヌダルク裁判、パリの街と言う小宇宙を舞台にした白夜やラルジャン、それに主人公の内容の孤独さと眼差しを描いた一貫性、この上記の物事が彼の全ての作品にはあると個人的には感じ取れる。

そうシネマトグラフと彼自身が言うように…。

本作の画期的なことを言うならば、勿論私はスリなどしたことない為、よくわからなかったが、よくよく繰り返し見てみるとスリをされる側の人間がする側を見ている間に財布や腕時計をスルと言う、相手に気づかれないかを試す好奇心が画面から伝わってくる。

スリを成功させるべく、指を柔らかくする訓練や懐から財布を取り抜く手の描写やパチンコゲームをする際の手のショット、銀行窓口からの連携やタクシーに乗ってスリの連携プレーは圧巻だか、1番凄いのはその流れから列車に乗って数人の男たちで財布や腕時計などをスル一連の行動はもはや芸術。

終盤の札束と手錠の描写も正に”手首”のファンタジーだ。‬

‪もし自分が監督業をしたなら彼の要素は入れてしまう…傑作

Jeffrey

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