形式的達成の度合が高すぎるあまり内容との整合性がとれていない気がする。死んだお父さんをとりあえず空いてる穴に埋めちゃえ(しかもそれが誰にもバレない)という短絡さというか展開上の引き出しのなさが、そこで繰り広げられている画面の凄まじい精度と釣り合っていない。「こういう画面を撮りたい」が物語の要求よりも優位にあることが、最低限必要な説明的ショットの欠落、形式に対する評価以外の読みの可能性の排除へと帰結しているばかりか、イネス・デ・メディロスに与えられた自己犠牲的役割へのエクスキューズにもなってしまっている。もちろんこれは映画としての美的クオリティの高さの裏返しとして生じるイチャモンには違いなく、デビュー作とは思えない完成度には当然今回も舌を巻いた。