Inagaquilala

マネーボールのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

マネーボール(2011年製作の映画)
3.8
このところ連日、大谷選手が所属するロサンゼルス・エンゼルスの試合を観ることが多く、映画観賞の本数も減っていた。そんななか、このメジャーリーグのオークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンを主人公とした作品が思い当たった。かなり以前に観ていたはずなのだが、あらためて大谷選手で火がついたメジャーリーグ熱のなかで再観賞すると、かなり面白い。弱小球団を強くするために、主人公が選手を獲得する舞台裏。そして、それらの選手をラインナップしての実戦。もちろんそういう部分も面白いのだが、今回、新たに気づいたのは、主人公自身のバックストーリーだ。

走・攻・守・肩・長打力と5拍子そろった超高校級選手としてドラフトの一巡目で指名を受けた主人公、名門スタンフォード大学への入学を蹴って、高額な契約金のためにプロ入りするが、残念ながらその後は泣かず飛ばず。そのあたりはかなり実話に近く、作品のなかでも人間ドラマとして描かれている。最終的には、「マネー・ボール理論」でチームを常勝球団に育てあげ、ボストン・レッドソックスからの高額オファーも受けるのだが、彼はそれを蹴ってしまう。「カネではない」というところは、大谷選手の考え方にも通じるものがある。

現実の試合の映像なども使用されたため、スティーヴン・ソダーバーグが監督を断ったというエピソードも初めて知ったが、それらも効果的に生かされている。脚本を担当したのが、「ソーシャル・ネットワーク」(デヴィッド・フインチャー監督)や「スティーブ・ジョブズ」(ダニー・ボイル監督)の脚本も書いたアーロン・ソーキン。近作の「モリーズ・ゲーム」では監督も務めたアーロンの脚本は、かなり主人公を深堀している。かつて観た作品をあらためて観賞し直すと、感想もかなり異なるものになることを教えてくれた。むしろ、最初のときより強く心を動かされた作品のひとつだ。
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