団塚唯我監督作品。
面白かったが、そこまで好みではなかった。ちょっと期待し過ぎたかもしれない。
撮影はすごく綺麗で、街の捉え方などは観ていて面白かった。
主演の黒崎煌代のたたずまいやセリフの発し方なども良かった。
映像のテンポ、リズムもすごく心地よかった。
車の走行シーンはやはり良い。どんな映画も車が出てくると画面が映える。
建築という題材も面白い。
音楽も良かった。
ただ、全体的にお利口な映画だ、という感じが拭えない。たぶん、色々なメタファーや意図や計算があるのだろう。色々な過去の映画へのリファレンスもあるのだろう。しかし、それらを読み解きたいと思わせるほど面白くはなかった。
「ドライブマイカー」の濱口竜介監督も似たように計算し尽くしされた映画を作る監督だけれど、この監督の巧さは、転調とドライブ感にある、と個人的に思っている。
突然物語のムードが急変したり、スピードが変わったり、「物語の転調」がすごく上手く、面白い。それから観客は物語に乗せられ、ドライブさせられる。その感覚が自分はとても好きだ。
本作「みはらし世代」は要素や断片的なモチーフは凄くセンスがいいものの、その転調とドライブ感に関しては、個人的には欠けているように感じられた。
終盤の電球が割れてからのファンタジックな展開、個人的にはあまり心が動かされなかった。転調、ドライブ感の作用が上手くいっているように感じられなかった。
全体的に、面白くなりそうなところで、すぐ次のシークエンスにいってしまう、そんな展開が多かったように思う。
単純に話の展開や流れが個人的に好みでなかっただけかもしれない。
しかし20代の新人が撮ったとは思えないほど堂々とした作品だったと思う。
色々書いたけれど、今後どんな作品を撮るか気になる監督。
現代日本映画を語る上では外せない作品だとは思った。
ちなみに、花屋?で突然女性が辞めますというくだりは黒沢清映画のようだった。
あとラストの終わり方は個人的には好き。こういうチャレンジングな演出をやるならやるで、全編やってほしかった。