【封印されしオリヴェイラ】
動画版▼
https://m.youtube.com/watch?v=NhWWtoTlIsw&t=668
Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイラ特集で封印されしオリヴェイラ『訪問、あるいは記憶、そして告白』を観た。本作は1981年、自分の死後に公開するためのドキュメンタリーとして制作されたエッセイである。彼は知る由もなかった。オリヴェイラが注目されるのは、1981年以降であり、『フランシスカ』『カニバイシュ』『ノン、あるいは支配の空しい栄光』などでカイエ・デュ・シネマにて注目され、日本でも人気を博したのだ。
2014年に亡くなり、翌年に全世界で公開された本作はオリヴェイラのルームツアー映画であった。映画というよりかはオリヴェイラ研究本といった作品なのだが、興味深く観た。
オリヴェイラ作品は『アブラハム渓谷』をはじめとし、閉ざされた空間の中で物語を進める傾向がある。関係性や心理領域を明確にする舞台装置として機能している。その裏付けとなる部屋や家へのこだわりが彼の口から語られる。
また、1981年の時点で、『ノン、あるいは支配の空しい栄光』や『アンジェリカの微笑み』の構想はできあがっており、10年規模の視座で映画へ落とし込もうとしている忍耐力をも確認できる。
また、オリヴェイラは窓や肖像画、手紙などといった異なるメディアを重ねて歴史性に奥行きを持たせる演出が特徴となっているのだが、本作では今/昔のイメージを同じ画の中で重ね合わせることで、その奥行きを表現する技術が観測できる。
正直、映画としては面白くないものの、オリヴェイラを語る上では重要な一本であった。