【オリヴェイラ映画の多層性】
Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイラ特集で『絶望の日』を観た。オリヴェイラの作品を分析する上で重要な作品ではあったが、面白いかと訊かれたら「つまらない」に該当する作品であった。
本作は、19世紀ポルトガルを代表とする小説家カミーロ・カステロ・ブランコが自殺するまでのいきさつを新聞などのテクストを基にカミーロ博物館で再現するといった内容。ストローブ=ユイレ『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記 』に近い状況再現映画である。
オリヴェイラは映画におけるイメージとは異なる媒体を介して、対象の歴史性を立体的に描く傾向がある。主に肖像画が使われるのだが、本作は新聞や手紙などといったテクストが主体であり、ナレーションだけでなく、実物を提示することによって歴史とは断片をもとにナラティブを形成することだと定義しているように思える。
ただ、いかんせん催眠的過ぎてあまり面白い映画ではなかった。