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夜顔 デジタル・リマスター版のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

4.0
【片思い世界~ねっとりおじVS熱い娼婦の眼差し】
Bunkamuraル・シネマにて開催中のマノエル・ド・オリヴェイラ特集で久しぶりに『夜顔』を観た。元ネタの『昼顔』も観ているはずなのだが、イマイチ覚えていないわけで新作を観るような感覚で臨んだ。これがめちゃくちゃ面白かった。

コンサート会場で、おじが舞台ではない方向へと眼差しを向ける。そこには女がいる。コンサートが終わるとダッシュで彼女の元へ向かおうとするのだが、人流に負けて追いつけない。あと一歩のところで、回避される《片思い世界》が繰り広げられる。

おじはバーへ入り、仲良くなったマスターに虚構のドロドロ恋愛話をするのだが、明らかに本人談であることを隠しきれていない。そんなおじに、娼婦の熱い眼差しが注がれるのだが、おじのターゲット同様、ぬるっと彼女たちの眼差しを回避し続ける。

本作はおじのストーカー行為に特化した映画ならではの気持ち悪さの美学に満ち溢れた作品であり、おじが本性を隠そうとして隠しきれない様をバーの裸婦肖像を観る/バーのマスターと話す/娼婦を無視する3つの運動で表現しているのが興味深い。

終盤のターゲットとの会話は、明らかにおじに対してダルそう塩対応している彼女に同情する。おじってねっとりしていて、話もつまらなくて気持ち悪いよねとなった。
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